ブログの呟き・2
1・おにいちゃん
きっかけは、些細なことだった。
会議の合間にランチを共にしていた枢軸の三人。 それぞれ好みのメニューを食しながら、雑談に花が咲いていた。 「……でね、フラン兄ちゃんが笑ったんだぁ。そしたらトーニョ兄ちゃんが『お前に笑われたらめっちゃむかつくわ』って怒っちゃってさ。間に挟まれて俺、すっごく困ったよ」 元気に喋るフェリの話を聞いていた菊が、ふと首を傾げた。 「フェリは、フランシスさんやアントーニョさんのことは『兄ちゃん』と呼ぶんですね」 「うん! だって俺より年上だし、色々苛められたり攻められたり踏まえたりして……。 あれ? 酷い目にばかりあってる?」 でも最近はそうでもないし。と呟くフェリに、「そういえば、たまに兄さんの事も『ギル兄ちゃん』と呼ぶな」とルートが付け加えた。 「つまり、条件は年齢だけですか」 菊がそう呟くのを聞いたふたりは、顔を見合わせる。 「あ! もしかしたら菊も『兄ちゃん』って呼んでほしい?」 すると菊は慌てたように手を振り、「いえ、素朴に疑問だっただけですから! そんなことは……」
語尾を濁し、それ以上は言わない菊だったが。
(呼ばれたかったのか)と、ルートは菊の表情を読み取った。 しかしフェリは何かを考えていて、気が回らないらしい。 「……年下の俺たちが気安いのは、失礼だったか? お前が何も言わないから、これでいいのかと思っていたんだが」 ルートが問うと、菊はふるふると首を振る。 「そんな意味じゃないんです。誤解させたのなら謝ります。 でも、フランシスさんたちがうらやましいとちょっと思ったのは、事実です」 照れ顔でそんなことを言う菊。(珍しく、可愛い事を言うなぁ)とルートが感心したその時。 「菊は、『兄ちゃん』って感じじゃないんだよなぁ」
相変わらず空気を読まないフェリが、そう呟いた。苦笑を浮かべた菊が「気にしないでください」と答えようとし、ルートが「お前は言葉を慎め」と叱ろうとした。 だが、それより早くフェリが満面の笑顔で菊に抱きつき、大声で叫ぶ。 「どっちかって言うと『菊じいちゃん』の方が近いかなぁ。うん、ぴったり!」 「……ぴったり、じゃありません!!」 ごつん。
菊に密着していたフェリは逃げようもなく、キツい拳骨を頭頂に喰らう。 古の雷親父をほうふつとさせる、見事な一発だった。 「俺、正直に言っただけなのに〜」 「だから悪いんです!」 「菊。けっこう自虐的だぞその台詞」 「貴方は黙っていてください!」 「ヴェ〜。ルッツに当たらないでよ! 菊、いつも自分で爺って言ってるのに〜」 「自分で言うのと言われるとは、違うんです」 「そう? 俺いつもヘタレって言われるけど、気にしないよ? だって本当の事だし」 「いやフェリシアーノ。そこはぜひ気にしろ、してくれ」
珍しい枢軸の口げんかは、何事かと他国の面々が集まるまで続いたという。
以上。『菊、じいちゃん認定される』の話。
終
*勢い余ってどこへ向かうのか、自分でも判りません。何故こんな話になったのか……。
拍手コメ欄に「枢軸頑張れ」がずらっと並んでいたのが嬉しくて、何か書きたいという情熱だけで仕上げました。拍手押してくださった方へ、ささやかですがレスに変えて。
2・だんごだんご
菊が独伊を迎えて花の宴を張る事が出来たのは、とある年の四月。 折よく満開のソメイヨシノに迎えられたふたりは、しばしあっけにとらえていた。 「うわ〜。すごいね」 特に、この時期はまだ全土が厚い雲に覆われているドイツから来たルートは、鮮やかな青空とパステルピンクに染まるこの国の春に驚嘆する。 「これは見事だ。花見という行事を大切にするわけだな」 「おそれいります」 答える菊は暖かい陽だまりにござを引き、ちんまりと正座して微笑んでいる。 「この種類は、花見を楽しむために品種改良を加えたモノですから。風景を変えるほど一気に咲いて、誰もが同時に春を知る」 共に春を喜ぶための花なんです。そう答えた菊は、桜を見上げて眩しそうに目を細めた。 「その思い入れの深さがよく判らないが……」 「でもでも、サクラが綺麗だって思う気持ちは俺も一緒だよ!」 だから仲間さっ! と元気に言い切って、フェリは菊の背中に抱きついた。 「美味しいモノを一緒に食べたら、もっと幸せな気持ちを共有できると思うであります!」 フェリの視線の先には、美しい三段重ねの箱がある。重箱というそれは、中に食べ物を詰めて運ぶ食器の一種だと聞いている。 手をパタパタ振りながら「食べた〜い」と訴えるフェリを見ながら、ルートはそっと苦笑した。 (菊には、手放しで甘えるんだなこいつは) 口に出していれば「貴方には及びません」と菊が突っ込んではずだが。無意識下で自覚のあったルートは、胸の内で呟くのにとどめた。
「わ! 俺の国旗だ!」 重箱のふたを開け、フェリが歓声を上げる。 「綺麗でしょ? 三色団子というんです」 「以前の枢軸弁当よりは、ずっといいな」 ずらり並んだ団子は、日独伊の国旗を象徴する色でできていた。しかも。 「この赤いのは……プチトマトだ!」 イタリア団子は、ヨモギと白餅の上にトマトが刺さっていた。 「俺のは……イチゴか」 「本当はサクランボにしたかったんですよ。でも今の季節、生が手に入らなくて」 黄身餡とこし餡にくるまれた団子に挟まれて、小さめの真っ赤なイチゴが存在を主張している。 「このトマト、味が濃厚でおいしい〜。香りもいいよ」 「こっちのイチゴはやや酸味があるが、菓子の甘みによく合っている」 もきゅもきゅと団子を口に運ぶふたりを、菊は嬉しそうに見ていた。 「じゃ、菊の団子はどんな味かな〜」 「あ! ちょっと待ってくださ……」 フェリに「待った」無し。「どんな味かな」の時点で、白団子で赤い物体を挟んだ日の丸団子は彼の口に消えている。 「…………すっぱ〜〜〜〜〜い! うわーん、甘いと思ったのに何これ〜」
「だから注意しようとしましたのに。真ん中のそれは、我が国伝統の保存食『梅干し』です。専門店から取り寄せたはちみつ漬けなんですが、やはり酸味はありますから。
日の丸といえば梅干し。これはゆずれません」 両手握りこぶし状態で力説する菊に圧倒され、フェリはいつのまにか頷いていた。伝統なら仕方がない。 隣ではルートが、「酸っぱいと最初からわかってれば、食べられる」とばかりに、団子を口に運んでいる。 「まあまあ。こちらにまだ、食べるものはたくさん準備してますから」 「酒は?」 「瓶ビールをケースごと、酒屋さんに運んでもらいましたよ!」 「Gute!(良し)」 見れば周囲でも、弁当を開いて宴が催されている。三人も呑んで食べて、あげく歌ったり踊ったりと、日本の春を堪能する。 この行事においてサクラは前座で、宴会がメインであると。日本の伝統を正しく認識した二人だった。
終
PS. 「フェリシアーノ、脱ぎます〜」 「よ〜し脱げ脱げ」 「脱がせないでください! 貴方が止めないなんて、酔ってるんですか?」 「俺は全っ然、酔ってない。ビールケースとお前を担いで帰る約束も、覚えてるぞ」
「私まで担げなんて言ってませんっ! フェリ、この人どうしてこんなに酔ってるんですか?」 「菊んちの人、ドイツ人は酒に強いと思ってるでしょ。 さっきからお酒勧められっぱなしだよ」
「ご来場の皆さま〜。ウチの子にえさを与えないでください〜」 「……ああ、うん。菊もかなり酔ってるんだ」
約束通り、ビールケースと菊を両肩に担いで帰ったルート。 翌朝、頭から布団をかぶって出てこなかった。 たまに「消えたい」などと呟く落ち込み方は、彼の兄にどこか似ていたという。
*花見団子を見て「イタリアカラーだ」と思った私の脳は、ヘタ汚染が進んでます。
団子で国旗と思った時、一番困ったのが「赤色をどうやって出すか」でした。 赤い素材を唐辛子と梅くらいしか思いつけず。 「食紅? いやそれは最終手段」と悩みまして。こういう結果になりました。 ここで言うサクランボは、アメリカンチェリーの事です。 瓶詰めなら一年中入手可能ですが、色が暗い赤紫なのがちょっと。
枢軸で拍手が多数入ってましたので、お礼代わりに書いてみました。 そういえば、泥酔ネタははじめて書いた、かな?
3・穴あきバケツ
独「ここに、穴のあいたバケツがあると仮定する」 伊「うんうん、それで?」 独「そんなバケツに水を入れても、穴からどんどんこぼれてしまう。だから、水を汲む前に穴をふさぐ必要がある。判るな?」 伊「それはわかるけど……」
独「つまりそれが今のユーロ事情だ。いくら融資しても、このままではどこかにダダ漏れになってしまう」 西「穴あきどころか、底が抜けかけとるもんな〜」 仏「しーっ! それ言っちゃだめ!」 伊「それならさ、バケツを買いかえればいいんじゃない?」 仏「伊も空気読んでお願いだから! 独国内で、『マルクに戻ろう』運動起こりそうなの今! アイツが降りちゃったら、管理の負担がうちに回ってくるの!」 伊「お金の事だったら、瑞にお願いしてみるとか?」 瑞「吾輩を当てにするな」 独「そうだ。まず自分で何とかしないと、今回を乗り切ってもまた同じことをする。だからまず穴(=国庫の無駄)を探して、埋めろ(=債務整理)と言ってるんだ!」 西「そうやな〜。俺もがんばっとるんやけどなぁ」 独「次はお前だ! と言われる前に何とかしてくれっ。そんなに難しい事は、要求してないつもりだが」 希「自分と同じ事を……他の人ができると……思わない方が…いい」 独「お前が言うなぁ!」
以上、「やんわり判った気分になれるユーロ事情」でした。
4・パパとボクとのお約束
日「ですから、彼には約束を破るつもりはなかったんですよ。ただ、それどころではなくなったと申しますか」 伊「ん〜。でも、子供からしたらただの『うそつき』だよね?」 日「それは、仕事の都合が思うように進まなかったので……」 伊「お前んちでは、仕事を理由に子供との約束破ってイイの?」 日「仕方なかったんですよ! だって、この仕事に失敗したら会社が倒産するかもしれないんです」 伊「それさあ、取引先を検討したほうが良かったんじゃない?」 日「長年の付き合いですからね。そうもいかないんです」 伊「だからって、子供に我慢させるのおかしくない? 俺には信じられないよ〜」 日「たしかに我が国では、身内に我慢してもらう傾向はあります」 伊「しかも、同じ子がず〜っと窮屈な思いをしてたんでしょ? 不公平だ〜」 日「それを言われると……」 独「お前たち、何の話をしているんだ。日本の新作アニメか?」 伊「違うよ、菊んちのパパ(=総理)が、『約束守れなくてゴメン』って子供(=県民)に謝るって話」 日「部屋(=島)を、広く使えるようにする(=基地移転)って前に約束(=公約)したんですよ」 伊「いくら仕事(=国政)が大切でもさ〜。お前ら、子供がぐれたり(=暴動)、家出する(=独立)とか、あり得ないって甘く見てるんでしょ」 日「それを言われると、返す言葉がないです」 独「もしかして、結構深刻な話か?」 日「株価が下がる(=支持率低下)はもう、仕方がないんですが」 独「そんな話をこいつにしてどうなるんだ!」 伊「わかってないね〜。彼は誰かに相談したいんじゃなくて、愚痴をこぼしたいだけなんだよ」 日「申し訳ありません。そういうことです」 伊「お前に言うと、シャレですまなくなるでしょ。だって、人の話を真面目に受け取って、即行動しちゃうからさ〜」 独「国としては判らないでもないが……俺個人として、その評価は不当だ! 徹底抗議する!」 伊「うあ〜、どうして俺が絞められるんだよ〜俺、愚痴の聞き役くらいしかできないんだから、いいだろ〜」
*ニュース見ながら書いてみたら、シャレにならなかった。沖縄の皆さま、茶化すつもりはありません。 政府の対応がしぬほどまずいのを、はらはらしながら見守ってます。
どこの県も「来て欲しくない」って言うのなら、「一家の総意です。お引き取り願えませんか?」ってわけにはいかないんだろうか? あんなに嫌われても駐留しなきゃならない一般兵さんも、切ないと思うんだ。 基地の無い土地に住んでいる自分は、かなり感情論なので。パパ(笑)の事もどうこう言えません。 難しい問題です。
write:2010/06/08
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