お掃除プロイセンさん〜亜米利加編
さて、どこのおうちに
お掃除に行きますか?
ドイツ イタリア 日本 オーストリア スウェーデン
ピッ → アメリカ
プロイセンは、アメリカの家に恩を売りに行く事にしました。 あの傍若無人な男に「恩を感じる」などという感覚があるのか疑問でしたが、ないならないで気が楽というモノです。 「俺様の凄さを教えてやるぜ!」 いつまでもどこまでも、超強気なプロイセンでした。
「掃除? 別にいいけど。しかし君も、ヒマなんだねぇ」 アメリカは快活に笑うと、プロイセンの申し出を受け入れました。 「テメェが腰抜かすほど、綺麗にしておいてやるぜ!」
プロイセンがケセセと笑い、胸を張ります。
相変わらず無駄に偉そうだと、アメリカはこっそり思いました。 「じゃ、すす払いと床磨きからお願いしようかな。 念のため言っておくけど、鍵のかかった部屋には入らないでくれよ。 俺んちのセキュリティは最新式だから、変な気を起こさない方が身のためだぞ!」 言うだけ言うと、アメリカはさっさと出かけてしまいました。 「よ〜し、あのガキにぎゃふんと言わせてやるっ」 そう宣言して、掃除に取り掛かったプロイセンでしたが……。
「……ったく、なんてデケぇんだこの家は!」 そう、アメリカの家はもんのすごく巨大でした。サンスーシー宮殿にはかなわねえけど、と呟いたプロイセンですが、ここはアメリカの個人宅。負け惜しみもいいところです。 「この家をひとりで管理してたって、マジかよリトアニアの奴」
遠い昔には敵だったり上司だったり仲間だったりした男の事を思い出して、プロイセンはおもわずため息をつきました。 一時的にですが、リトアニアはアメリカの秘書兼執事のような事をしていました。その時の話を聞いているプロイセンは、「ここでメゲたらあいつに負ける!」と残る根性振り絞ります。 「見ていてくれフリッツ親父!」 猛然と、床にモップ掛けを開始するプロイセン。敬愛する親父の名前が出てくる時点で、かなりくたびれてます。
「ん? この部屋はなんだ?」
そこは、一見倉庫のように見えました。
雑然とモノが積み上げられ、何もかもうっすら埃をかぶっています。 しばらく、誰も出入りしてなかったようです。 (まあいいや、俺様の手にかかればあっという間にぴかぴかだぜ) そう思ったプロイセンでしたが、足を踏み入れる前に部屋を見回しました。 ここはかつて、子供部屋だったようです。小さめの机の上には鮮やかな表紙の絵本が並び、ベッドはまるで服置き場。
妙に懐かしさを覚える配色の軍服の下には、仕立ての良い子供用礼服がのぞいています。 その堅苦しいデザインは、イギリス御用達の店で誂えたものでしょう。 プロイセンには一目で判りました。
年代順の地層になっていると思しき服の山を調べたプロイセンは、(どの服もあまり着た気配がないな)という事に気付きます。 (気にいらなかったのか、成長が速すぎて着る暇がなかったのか)
後者だろう、とプロイセンは考えました。
なぜか確信を持って、そんな気がしました。 棚に並んだぬいぐるみ、床に広げられた兵隊人形。 まるで、この部屋自体が忘れられたおもちゃ箱のようだと、プロイセンは思いました。 「……」 しばらく考え込んでいたプロイセンは、やがてそっと扉を閉じました。
プロイセンはキッチンで勝手に一休みです。 「アメリカのビール、味しねえ!」 などとひとりごとを呟いているところに、誰かがどたばたと近づいてくる気配が伝わってきました。 「おいプロイセンっ!」 ドアをたたき壊しそうな勢いで飛び込んできたのは、アメリカでした。 「君……まさか、奥の部屋には入ってないだろうね?!」 アメリカ本人以外近寄らない事が不文律になっている「例の部屋」に、鍵をかけていない事を思い出してダッシュで戻って来たのでした。 「なんのことだよ。俺様くたびれて休憩中」 ヘラヘラとぼけると、アメリカはほっとしたように肩を落とします。 (お? こいつも可愛いところあるじゃねぇか) ケセセと笑うプロイセンを、アメリカが妙な顔で見ています。 「もういいだろ? 気がすんだら帰ってくれよ」 「何だよその言い方は。俺様が心をこめて掃除してやったのに」 単に誉められたくて掃除行脚を続けているプロイセンが、ちょっと拗ねてみせます。 内心(可愛くない)と思ったアメリカでしたが、一応「ありがとう」と伝えました。 「判ればいいんだよ。ま、子供部屋は自分で掃除しないと、しつけになんねーからな」
俺様子育てもプロ級だぜ。とうそぶくプロイセンは、アメリカの眼鏡がきらりと光ったのを見落としました。 「……君、やっぱり入ったんじゃないかっ!!」 余計なひと言が徒になり、プロイセンはアメリカにボコられましたとさ。
BUT
END
* おそうじプロイセンさん、ねつ造してみました。 掃除といえば倉庫。倉庫といえば例のあの部屋しかないな! と思って突貫工事です。
ネタを尊重したので、国名表示です。 地の文も、ゲームに近くなるよう心掛けましたが、いかがでしょう?
というわけで。 楽しいネタを常に提供してくださるご本家に、乾杯です。 もう一生ついていきます。
Write:2010/09/10
|
|