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ヘタリアクエスト〜せかいのまもりびと



 気がつくと、冒険者をやっていた。

 ある夜のこと。ルートはいつも通り自宅のベッドで一人、就寝した。
 そのまま速やかに熟睡したはずなのだが、ふと気付くと目の前にフェリがいる。嫌にひらひらした服を着た彼が、ルートを必死で起こしていた。
 うっかりと「いつものこと」と判断して「うるさいぞフェリ! 来るなとは言わないが俺の睡眠を邪魔するな」と怒鳴りつけ、ついでに締めあげた。
「ヴェ、お願いちゃんと起きてルッツ〜」
「これ以上なく起きてるぞ!」
 低くうなりながら、ルートの腕が彼の首を容赦なく締め上げる。
「えっと、ルッツは寝ているはずで……ぐぇ、まずちょっと話を聞いて欲しいんだけど〜」
 泣きべそ状態のフェリの首から腕をはずすと、フェリがルートの肩に手を置いて、告げた。
「落ち着いて聞いてね。ルッツは今寝てるんだよ。ここは多分、俺の夢の中の世界なんだ。それで……」
「何の因果で、夢の中でまでお前に付きまとわれなきゃならんのだ!」
「うわ〜ん、なにげにルッツがひどいよっ。時間がないからちょっと話聞いてよ〜」

 彼のつたない説明によると。ある日フェリは蚤の市で古書を手に入れた。繊細な装丁と美しい挿絵が気に入って、ついベッドに持ち込んで読みながら眠ったところ。
「夢の中で頼まれ事されちゃってさ。夢だからいいやーって引き受けたの」
 お前は普段からそういう奴だ。と、ツッコミ入れつつ話を聞くルート。
 ところが。その話は一夜の夢に終わらず、それから毎夜眠りにつくと、その世界に呼び出されるようになったという。
「俺一人じゃどうにもならなくて、逃げ回ってたんだけどね」
 なんだか仲間を呼べるようになったんだよ。と、フェリは言う。
「仲間?」
「うん。俺と同じ時間に眠ってる友人を呼べるみたい」
 だから真っ先にお前を呼んだんだ〜。と笑顔で言われ、ルートは軽く頭痛がしてきた。
「それで。俺は何をすればいいんだ」
 問うと、フェリは嬉しそうに彼の腕を引く。まずは冒険者として登録し、武器や防具を買うのだと説明された。
「どこに行っても変な怪物がいてさ。そいつらを倒さないと先に進めないんだよ」
「……つまり、昔やったようなことをやれと言うんだな」
 不機嫌そうな声を出すと、フェリはたちまち小さくなった。
「でも俺約束しちゃったし。ルッツに助けてほしいんだけど、だめかなぁ」
「どうせ夢なんだろ? なら、いい。付き合ってやるよ」
「わ〜い、ありがとうルッツ。じゃ、俺兄ちゃんたち呼んでみるね」
 兄ちゃん『たち』? と疑問に思うより早く、目の前にふたりの男が降ってきた。癖っ毛付きの茶髪と、短めのアッシュブロンドはあまりに見慣れていて。
「兄ちゃん、ギル。起きてよねえ。ちょっと俺の話聞いてほしいんだけど」
 どうせなら一度に呼べ馬鹿者っ! というルートの罵声で、ふたりが起きた。先ほどの話をもう一度繰り返したら、ふたりとも人となりに応じた言葉で快諾した。
「それで、お前が頼まれたことって何だよ」
 ロヴィに問われ、フェリは言いにくそうに言葉を濁す。
「実はね。崩壊しそうな世界を救ってくれ、って言われたんだけど」
「「「そんな依頼をうかつに受けるなっっっ!」」」

 彼の言うとおり、それは普通の夢ではなかった。
 毎夜ではないが、眠りにつくと間もなくフェリが現れて「行こう」とさそう。メンバーは時に入れ替わり、アーサーとフランだったり、ローデとエリザだったり様々だった。
 フェリックスとトーリスなど、ルートの顔を見たとたんに逃げた。おかげで、ふたりを探している間に夜が明けるという情けない事態が発生してしまい、ルートは多少落ち込んだ。
 フェリは結構顔が広いんだな。と、逃げられた自分を反省しつつルートは思う。少し彼を見直したが、本人には教えない。
「シエスタしたら、菊が仲間になってくれたんだよ!」
 昼寝中も例外ではないのかと思うと、彼の精神疲労がちょっと心配になるルートだった。
 呼ばれる仲間は日によって違うが、フェリはずっと夢の世界に付き合いっぱなしのはずなのだから当然だろう。
 ある日それを問うと、フェリは真面目な顔で「笑わずに聞いてね?」と告げる。
「どうもね、俺はこの世界だと『天使』らしいんだぁ」
 だから疲れたりしないみたいだよ、心配かけてごめんね。言いながらフェリは、ルートがいつ笑うかと内心ドキドキしていた。
(俺が天使なんて、おかしいよね)
「お前が天使なら、俺は何なんだ」
「え? えっと、人間だと思う……よ」
 そうか。と呟くと、ルートは笑った。フェリが考えていたのとは違う、楽しそうな微笑みだったので、フェリは言葉を失った。
「お前が天使で、俺が人間か。悪くない」なぜか嬉しそうなルート。
 フェリの頭をぐりぐり撫でると、「そろそろ菊を呼べるんじゃないか」と言う。
 日本とは時差があるので、菊を呼ぶためには彼らのほうが時間をずらさないといけない。今日はあらかじめ連絡を取り合い、彼を呼びだしたというわけだ。
「うん、ちょっと呼んでみるよ」
 瞬きする間もなく、ローブ姿で杖をもった菊が現れた。身構えていたのか即座に目を覚まし、ふたりを見て微笑んだ。
「おや。今日は三人ですか」
「たまにはいいでしょ? ルッツが殴って、菊が治して、俺は応援!」
「お前の『旅芸人』って職業、どうにかならんのか」
 すでに手慣れた風情の三人。彼らの冒険が、今日も始まる。

 終



*拍手お礼文第三弾でした。

 ドラクエが大好きです。先日発売になった9は、当日ゲットして、鬼のようにやりこみました。
 主人公が天使、という情報は前からあったので、「フェリでプレイしよう♪」と前から決めてました。
 もちろん他の仲間もヘタリアから登場です。楽しかった〜。
 上の話はあくまで「ヘタリアクエスト」で、ドラクエとは何の関係もありません。ええ、ないんです。

 9月7日のご本家さまブログで見た『ヘタリアファンタジア』の記事を見て、どうしても書きたくなって。
 しかもファンタジーじゃなくて「クエスト」ですとも。
 応募者プレゼントのCDドラマだそうですね。楽しそうだな〜と思ったら手が勝手にキーボードを打ってました(こら



Write:2009/09/27 (Sun)

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