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ブログの呟き・1


年寄りの話は長い/ぽりぽり。/銀の龍没ネタ
たいようときたかぜ/それは武士のたしなみ的な


 1:年寄りの話は、長い

「年長者が昔話に興じ始めた時、どんな反応をするかを「幼少時・国の人たち」で考えてみました。
 全員名前の前に「ちび」がつくと思って、お読みください。

・アルフレッド 自分に関係のない話が面白くなくて、無口→暴れる。割と普通だな。

・ヨンス 自分の過去話なら、覚えていてもいなくても発言。自分の知らない昔話でも、とにかく口出し。

・ルート 真面目に昔話に耳を傾けそう。知らない事を知るのは楽しいなどと、素で思っている。

・アーサー 同上だが、繰り言には文句を言うし、矛盾点は指摘するしで、最後に「なまいき」と叱られる。

・ギル 話が始まる前に逃走。しかもひとりじゃなくて、エリザとかトーニョとかを誘って。

・エリザ ギルと同じだけど、ギルは誘わない (え

・ローデ 完璧に聞いているのはルートに同じ。適度な相槌で話を長引かせる悪癖(?)がある。

・フェリ ピントのずれた事を聞いて話を脱線させ、話そのものをぶち切っちゃう。ある意味質問名人。

・フラン 聴き上手だけど、心中の批評はとても辛辣。

・トーニョ 聞いてるような顔して全く聞いてないのに、喋る方を満足させる相槌上手。

・ロヴィ 聞いて無いようで聞いている。でも、聞いてるように見えないという理由で叱られる損なタイプ。

・バッシュ 聞いているのかいないのか傍目に判らない、と油断したらいきなり鋭いツッコミ発言。

・イヴァン なぜか「思い出を語る側」に混ざっている。誰もそれを不思議と思わないのが最大の謎。

・ヘラ 猫と一緒に寝てるけど、「あの子はああだから」で許される。

・菊、耀 彼らレベルに達すると、「聞いてるふりして目を開けたまま眠る」くらい朝飯前。



 2:ぽりぽり。

 アルフレッドが会議中に何かを食べているのはいつもの事だ。
 だが、今日はいつものハンバーガーとシェイクではなく、つつましい手つきで何か小さなものを口に運んでいる。

 ぽりぽり。

「おい、お前何食べてるんだ?」
 最初は(バターピーナッツでも持ちこんだのだろう)と気にも留めなかったアーサーだが、香りが違う。
「菊がくれたんだ。いつものスナックよりはヘルシーだからどうぞ、だって」
 そう言いながらも、アルの手は止まらない。見れば砂糖も塩もまぶしてない、ただの炒り豆のようだ。確かにヘルシーだろう。
「ふーん。俺にも味見させろ」
 アーサーが言うと、アルが豆入りの大袋を差し出した。

 ぽりぽり。

 軽い豆をふたりで無言ままつまむ。ふと、アルが袋ではなく小さな木箱を手にしていることに気づくアーサー。
「食べにくそうだな。何だ、その箱」
 問うと、アルは「よくぞ聞いてくれた」と言わんばかりににやりと笑った。
「これはね、特別。日本の習慣で、年齢の数だけ豆を食べるといい事があるからって菊が準備してくれたんだぞ」
「……歳の、数?」
「そうだぞ。俺の年齢の数だけ、この箱に詰めてね。紅白のペーパーリボンで飾って届けてくれたんだ。
 234粒を、数えてくれたんだぞ。すごいだろ! 俺なら途中で飽きるよ」
 木箱を大事そうに手中に収め、アルはやたら上機嫌だ。自分なら面倒でできない手間をかけてくれたというのが、嬉しかったのだと判る。
「歳を数えて喜ぶなんて、若造だなお前も。俺なんてほぼ4ケタだぞ。豆粒を900粒以上数え続けるってそりゃ、どんな罰ゲームだよ」
 さりげなく年齢差を強調されたアルは、「またか」と言わんばかりに肩をすくめる。
「何とでも言って。数えられて嬉しい年頃なのを、今日は喜んでるんだからね」
「ふん、そりゃよかったな。……まてよ」
 アーサーが、首をひねる。
「年齢の数だけ豆を食べるのが日本の習慣だとしたら、菊も食べてるのか?」
「……彼、何歳だっけ?」
「あの国の皇室に伝わる暦によると、二千を超えてるらしいが」
 しばしの沈黙ののち、示し合わせたようなタイミングで携帯を取り出すふたり。
 菊に連絡するならどちらか一人でいいのに、こういう時譲ろうとしないのが似た者同士と言えなくもない。
「やあ、こんな時間にすまない。今アルフレッドと一緒なんだが……」
 つながったのはアーサーの携帯だった。
「歳の数だけ豆を食べるという話を聞いたんだが、まさかお前は食べないよな」
「食べないわけないでしょう、縁起でもない」
「そういう話なのか?!」
 アーサーの手から携帯をひったくり、アルが会話を横取りする。
「ところでさ。君、今年何歳だっけ?」
 遥か海の向こうにいる男が、アルの耳に忍び笑いを伝える。
「そんなことを聞いてどうなさるんですか。……2670年ですが」
「俺の10倍? 信じられない」
 唖然とするアルから携帯を再奪取し、アーサーが再び喋る。
「ハトじゃあるまいに、本当に2000粒も豆を食うのか」
「貴方、失礼ですよ。慣れてますからどうってことありません。それでは私、豆をつつく作業に戻ります」
 それっきり通話が途絶えた。菊を怒らせた(と思った)アーサーは顔が白くなっている。
「神秘の国だねえ」
 良く判らない感想をこぼしつつ、アルは再び豆をつまむ。

 ぽりぽり。

 何となく圧倒されて、口数が減ってしまったふたりだった。

 終



 3:銀の龍・没ネタ

  その1
「お前、人の形のままでは飛べないのか」
「龍は羽があるでしょ。人型はちょっと身軽な程度だよ」
「図版でしか見てないが、あんな小さな羽でよく飛べるな」
「それはね、骨に秘密があるんだよ。龍骨はすごく硬くてすごく軽いの。だから、風に乗って飛べるんだ」
 そうか。と呟いた男は、ためしに龍のベルトをつかんで持ち上げてみる。
「なるほど。確かに軽いな」
「ヴェ〜何するんだよ! 片手で吊るされるなんて、クツジョクだぁ」
「(軽くゆすりながら)つまり龍型のお前は、風船みたいなものか」
「挙句、中身空っぽ呼ばわり?! ひどいよ〜」

 *「これなら担げる」と、ルートは確信したようです。
   全体が長くなりすぎたのと、挿入する場所がなくてボツにしました。

 その2
 男の食事は一日二回。薄茶色の粉を直接口に頬張り、水で流しこむという味気ないものだ。
「美味しくなさそう〜」
「お前、モノを食う必要なんかないくせに偉そうに言うな」
「食べなくても大丈夫だけど、味は判るよ」
 味が判るのに食べなきゃならないのって、大変だよね。と、龍は真顔で呟いた。
「これは、炒った大麦を粉にしてそのまま食べられるようにした携帯食だ。少し手間をかければもっとましな料理になる」
 そう言って、男は鞄から塩や糖蜜を取り出す。
「味をつけて湯で練れば、ずっと食べやすい。煮れば粥になるし、焼けばパンケーキだ。
 ……って、おい! よだれをたらすな馬鹿野郎!」
 慌てて服の袖で顔を拭う龍。男が抱いていていた聖獣のイメージは、あっさりと崩壊した。
「俺、一口でいいから食べてみたい。お願いだよ。前にいろいろ食べた記憶はあるんだけど、実際に料理を口にした事、ないんだ」
 前、というのは転生前の話だろう。そう言われては、男も断ることができない。
「朝の分は食べたから、今夜まで待て」
 その夜、久しぶりに湯を沸かしてわずかばかりの粥を煮た。糖蜜と貴重な脂をたして味付けも完了。
「わ〜い。料理だぁ! すごいなぁ」
 子供のようにはしゃぐ龍。すでに威厳のかけらもないなと思いつつ男が「食え」と勧めると……。
「あ〜ん」
 龍は嬉しそうに口を開けて、食べさせてくれるのを待っている。
 ああ、なるほど。確かにこいつはまだ雛なんだ。と、男は納得してしまった。

 *食べさせて、あ〜ん。が書きたかったのですが。
  色っぽくない上に説明くさいので、ボツです。しかも無駄に長いし。


 帰国したルートは、ギルに騙されて王位につきます。
 彼が王位を蹴ったのは、東の国に住む女将軍に惚れたから……という噂がありますが、はてさて。
 フェリは王の友人として国に留まっていました。龍に戻ってからは、山と城を往復して暮らします。
 ルートはやがて、リヒテンちゃんみたいなおっとりして芯の強い女性と結婚。
 フェリも家族の一員のように迎えられ、仲良く幸せな時を過ごします。
 王の伝説のいくつかに手を貸したのはフェリですが、実際の仕掛け人はギルです。
 ルートはこの時代には珍しく、80歳近くまで長生きします、が。
 その後は切ないことになるので、書かない方がいいかなと思います。

 こんなネタをダラダラ書いたのは、「その後」を書く予定がないからです。
 オリジナル色が強くなりすぎるので、どうよ? と思うので。
 ↑を読み返して、「菊に似たしっかり者の姉さん女房でもいいな」と思ってしまいました。 



 4:たいようときたかぜ

 景気回復が各国の合言葉になって、一年以上たつ。経済状態が悪化するとそれが体調に影響する『国の人たち』の顔色は、どっちを見ても悪いとしか言いようがない。
「何だか、血のめぐりが悪い気がします」
 そう呟く菊は、コタツに半身をすっぽり納めて丸くなっている。
「うん。世界中の流通を活発にする程のパワーが欲しいよねぇ」
 ミカンをむきながら、フランがぼやく。EUになってから、どこか一カ国でもインフレのドツボにはまると、参加国総じて悪影響を被る。
「はっはっは。足引っ張る奴がいると大変だね!」
「お前が言うな! 今度の恐慌も、お前が引き金じゃないか」
 あんまんをパクつくアルに釘をさすアーサーは、肉まん派だ。
「菊んちは持ちこたえてる方でしょ」
「そうでもないです。久しぶりに政権が変ったので、上を下への大騒ぎですよ」
 信用を失ったがコネだけはしっかり持っている旧政権。夢と理想は胸一杯だが、ノウハウがない新政権。
 菊に言わせれば、新しい事がそんなに簡単に進むわけがない。
 それなのに、特に最近の人は目に見える形で即座に結果が出ないと満足できないような気がする。
「うちの人たちは、いつからこんなに辛抱が足りなくなったのでしょう」
 あんまんをかたずけ、コーラで喉を潤していたアルがのんきに笑った。
「そうかな? 俺に言わせれば菊んちの人は、反応が鈍いよ?」
「それはあなたがいつも無茶を言うからです!」
 不機嫌そうにアルをにらんで、菊は「何か打つ手はないものでしょうか」と呟いた。
「オリンピックくらいじゃ、きっかけにならなかったね」
 視線を空に向けて、ちょっとさびしそうに答えたのはフラン。カナダでの大規模デモのニュースが、彼の心も暗くしてしまったようだ。
「お前んちで去年、個人消費で景気回復狙ったのは……駄目だったみたいだしな」
 アーサーの慰めは、逆に菊の逆鱗に触れた。
「あんなもの! 選挙のために現金をばらまく、恥知らずな目論見です! うまくいくわけないでしょう」
「……あ〜。でも、お前んちの奴らも、ちょっとは喜んだんだろ?」
「日本ではああいう状態を『焼け石に水』って表現するんです!」
 厳しい口調で言い切ってから、「すいません」とアーサーに謝る菊。
「いや、いいよ気にするな」
 菊が愚痴をこぼすのは珍しいので、アーサーは内心ちょっと嬉しい。
 新たにお茶を淹れなおしながら、菊がポツンと呟いた。
「消費税、アップしちゃおうかな」
 ……いきなり何を言い出しますかこの人は。
 物思いにふけったり、空気を読まずマイペースにくつろいでたりした三人が、目をむく。
「来年から消費税10%にします! って言ったら、皆『今のうちに』って色々決断しませんかね」
 家買ったり、結婚したりとか、大量消費が望めそうです。などと呟く菊を見て、「やばい」と思う三人。
「菊落ち着け! 国民に負担をかけていい事はないぞ!」
 アーサーがたしなめると、菊はしょんぼりとうつむいてしまう。「判ってます」などと呟きながら。
「でも、それで景気が回復したら! 消費税上げなくてすむんです。その方がいいと思いませんか?」
「あ〜。言いたいことは判ったよ。だからね、お前さん寝なさい。とにかく寝たほうがいいよ」
「そうだね。冷静さを取り戻したほうがいいぞ君らしくもない」

 三人がかりで菊を慰めるという、珍しい状態になった早春の一日だった。

 終



 5:それは武士のたしなみ的な

 菊の軍服には、隠しポケットがたくさんついている。
 隠し方の巧さもさることながら、手裏剣や小刀まで隠し持って外観のラインが崩れない技術はすごいとフェリは思う。
 だから、菊が上着を脱いだ時は(そんなチャンスはめったにないが)、隠しポケットを探るのがフェリの楽しみだった。
 だがその日は。
「ヴェ? すごいな、こんな隠し場所がまだあったんだ」
 今まで気づけなかった隠しの中の隠しポケットを見つけたフェリは、ウキウキとその中に手を突っ込みそして。
「うひゃ〜。なんで? なんでこんなモノが入ってるの?」
 フェリがつまみだしたのは、男性用の下着。それもクラシックパンツと呼ばれる代物だった。
 生きて呼吸するクラシック……とも言える存在の菊は、今でも頑固に旧態依然の下着を愛用している。
 そのことは、フェリもルートも知っていたが。
「いくら新品とはいえ、握りしめて叫ぶのはやめてください」
 眉を寄せて菊がたしなめるが、フェリはその程度で引っ込んだりしない。フェリにとって、大事な下着と言えば「勝負パンツ」くらいしか思いつかないのだが。
 菊が軍服にそんなものを常備するとは思えない。むしろ……。
「もしかして、あれ? いつかの鉢巻きみたいな意味があるとか?」
「まあ、そういうことです。死地に赴く前に禊ぐのは、武士のたしなみですよ」
 菊も菊んちの人も、ストイックだよ〜とフェリは嘆く。
「うわ〜ん、嫌だよ菊セップクは駄目だからね!」
「そこまで飛躍しますか」
 褌握りしめたまま抱きつくフェリの背中を、軽く叩いてなだめる菊。
「新品は要するにただの白い布ですから。汎用性が高いんです。あなたたちの下着と違ってね」
「ふむ、包帯代わりに使えそうだな」
 それまで黙ってふたりのやり取りを見ていたルートが呟く。
「縄もなえますし、風呂敷代わりにも使えます」
「あ! 白旗の代わりにもなるよね!」
 フェリが嬉しそうに発言すると、ルートと菊の返事が重なった。
「そんなわけないだろう」
「そういうこともありますね」
 え? と菊に視線を向けるふたり。
「最後まで退かず戦うのは、あれを持つ者の仕事です」
 言いながら菊が目線を向けたのは、彼の愛刀。
「白旗大いに結構。こんなものが役に立つなら、逃げるお役に立てていただきましょう」
 物腰柔らかく、如才なくふるまえるようになっても。彼は今でも、心のどこかに抜き身の刀を隠しているようだ。
「!」
 突然、ルートが菊を背後から抱きしめた。慌てる菊に、まだハグ状態のフェリが笑いながら告げる。
「ルッツ、感激しちゃったんだよ。こういう話大好きだからね〜」
「貴方が単純なのはよく判りました! 暑苦しいから離れてください!」
 
 ふたりに前後から羽交い絞めにされた菊は、翌日腰痛に悩まされた。
 周囲から見舞いと共に理由を問われたが、笑ってごまかす。
 下着が原因なんて、口が裂けても言えない「倫理観もクラシック」な菊だった。

 終



 Write:2010/02/20

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