とっぷてきすとぺーじ小ネタ 本文へジャンプ


よく考えたら、アーサー不幸じゃね?


 ☆「笑いながら話せる日が来るなら」の、パラレルな小ネタです。


その1.菊の場合
 居間に戻ってきた菊は、胸に薄い風呂敷包みを抱えていた。何だろう?といぶかるアーサーの目前まで迫った菊は、「お願いがあります」と告げた。
 風呂敷に視線を向けたまま「何だ」と問うと、菊は頬を赤らめてややためらう風情を見せた。
 ああ、と落胆の気持ちでアーサーは察する。
(俺に、帰れと言いたいんだ)
 先に礼を欠いたのは俺だから仕方がない。そう思ったアーサーが立ち上がると、菊が彼の前に回りこんだ。
「……」
 耳たぶまで赤く染めて、必死で言葉を選んでいる菊。なんだか気の毒になって、アーサーは自分から「今日は帰る」と口にした。
 が、次の瞬間。
 菊の手が彼のジャケットにかかったかと思うと、ぱっと左右に開かれた。
「おそれいります。脱いでいただけますか?」
 …………今こいつ、なんて言った? 一瞬にして頭がまっ白になったアーサーにかまわず、菊の手はサマージャケットを奪い取った。
 続いてネクタイが緩められるにおよび、アーサーはさすがにぼーっとしていられなくなった。
 とりあえず菊の手を握って止めると、上目遣いににらまれてしまう。
「こっちだって恥ずかしいんです。抵抗せずにおとなしく脱いでください。いっそ自分で脱いでくださると助かるんですがっ」
 なぜかすごい剣幕でそう告げられ、アーサーはつい、こう答えた。
「いや、さすがにまだ昼間だし。隣に人もいる……」
 何考えてるんですか貴方はっ! と、菊から張り手を喰らう不幸なアーサーだった。

 作者の感想 ツンデレって罪作りやと思うねん。



その2.ルートの場合
 居間から出て行った菊と入れ違いに入ってきたのは、ルートだった。ずかずかと踏み込んでアーサーの隣にどかっと腰を下ろした彼は、いきなり重いため息をついた。
「なんだ? 謝りに来たのか」
 どちらかというと自分の方が悪いのだが、ついこういう言い方になってしまうのは長年の習慣だ。ルートごときに見せる弱みは存在しない。
「いや……まいったな」
 ルートは、顎に手をあてて煩悶している。珍しいこともあるものだ。と、アーサーが冷静に観察できたのはここまでだった。
「やれと言われた以上、しかたがない。気は進まんが……」
 ルートの手が、いきなりアーサーの胸倉に伸びてきた。彼のネクタイを左手でがっちり掴むと、心底嫌そうな表情でこう言った。
「脱げ」
 頭で理解するより、身体の反応の方が早いのが軍人の性かもしれない。 畳に座った体勢から、反射的に腰で退りつつ思いっきりルートの腹筋に蹴りを入れていた。
 さすがのマッチョも痛かったようだ。思わぬ反撃に顔をしかめるが、それくらいで掴んだネクタイを離したりはしない。
 首輪につながれた犬のように引き寄せられ、アーサーは逃げられない。
「余計な抵抗は無意味だ。痛い思いをしたくなかったら、自分で脱いでもらおうか」
 神ならぬ身の英国紳士。何故いきなりこんな状態になっているのか理解できず、アーサーは必死に声を張って言い返した。
「てめぇに何かされるくらいなら、舌噛んでやるっ」
「何期待してるのか知らないが、これ以上俺を怒らせないほうがお前の身の為だぞ」
 でっかい拳を鼻先にちらつかせられる、不幸なアーサーだった。

 作者の感想 ツンデレも、相手を選ぼうという話。



 これ、会話の展開は両方ほぼ同じなんです。なのにこの違いって。
 アーサー、実際の相手がフェリでよかったね。
 どちらになっても、しばらく菊の家には近寄れなくなるところでしたよ。
 その1でのアーサー、別に危ないことを考えたわけではありません。
 昼間から他人の家で裸になることに抵抗があっただけです。ノーマルな反応のはずなのに、なぜこうなる。
 うん、アーサーはどっち展開でも書けそう……と。(メモ
 皆様はどっちがいいと思いますか? ボケとツッコミ。



Write:2009/08/06 (Thu)

  とっぷてきすとぺーじ小ネタ