お掃除プロイセンさん〜露西亜編
さて、どこのおうちに お掃除に行きますか?
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ピッ → ロシア
いつの間にか選択肢にロシアが加わっていました。 「あいつんちか。まあ、仲間はずれはよくねえよな」 どうかすると「ひとり楽しすぎるぜ」状態になってしまうプロイセンが言うと、シャレにならない独白でです。 「俺様の、小鳥のような博愛精神で掃除してやるぜ!」 ロシアはとは因縁浅からぬ仲ですが、彼個人を嫌っているわけではありません。 (長い年月をかけて静かに移動する氷河のような、重量感のあるオーラが苦手なだけだ)……とプロイセンは思っています。 とは言え。
彼が正面切って「掃除させろ!」と言った場合、ロシアはいつもの笑顔で裏を読み取ろうとするでしょう。 逆の立場なら、間違いなくプロイセンもそう考えます。 要するに、ふたりはそういう関係なのです。 「仕方ねえな。ロシアの留守を狙ってこっそり掃除するか。 『俺様参上!』って置手紙すれば、奴も驚くだろうしな」 ケセセと笑うプロイセン。もはや当初の目的を見失っています。
ロシアの家を訪問し、「掃除に来たぜ」と言い放ってずかずか踏み込みます。 居合わせた使用人の中で年長の者が、慇懃にプロイセンを出迎えました。 どうやら、彼の事を覚えているようです。 昔。それほど遠くない昔、この家を訪ねた記憶がふとよみがえりました。たいてい喧嘩を吹っかけに来ていたのですが、たまにはロシアと食事を共にすることもあったのです。 当時の事を知っている人間がいたおかげでスムーズに目的達成できそうですが、プロイセンは少し複雑な心境でした。 昔とちっとも変らない書斎の埃をはたいていると、本棚を整理する彼の後ろをついて回っていたロシアの事を思いだします。 大きな身体で彼の背後から手元を覗きこみ、プロイセンが慣れた手つきで本を入れ替えるのを楽しそうに見ていました。 「へー。そんな分類法があるんだ。すごいね。 やっぱり整理整頓にかけては、君たちが一番だよね」 ニコニコしながら話しかけてきたロシアの幻が、脳裏に浮かびます。 こんな風に、たまに見せた「国としての脅威を微塵も感じさせない素朴な態度」が、彼を嫌いになれない理由でしょう。 「あー。変な事思い出しちまったぜ。たまには部屋の模様替えしろっての。 なんだか、人の気配が染みついてる気が……うわぁ!」
突然背後から手が伸びてきて、プロイセンにナイフが突きつけられました。
(ついさっきまで誰もいなかったぞ?!) 「兄さんの家で、何をしている」 静かな声で語りかけて来たのは、彼もよく知っている銀髪の美女です。 「……なんだよ、ベラルーシか」 「兄さんに何かしたら、私が許さない」 プロイセンの言葉に耳を貸す気がないのか、ベラルーシは両手のナイフを彼の首筋に押し付けます。 「待て、押し付けるな切れる切れるっ!」 「動かなければ切れたりしない。大人しくしろ」 うわ〜懐かしいよなこのシチュエーション。などと場違いな感想を抱くプロイセンでした。 話を聞け! と悲鳴を上げる男を壁に押し付け、ベラルーシはようやく得物をしまいました。 壁に両手をついたまま、プロイセンはここに来た事情を話します。 「掃除だなんて。そんなに兄さんにかまって欲しいの?」
「違うって。本当に単なる気まぐれだ!」 誰が聞いても怪しい言い訳です。ベラルーシが納得するわけがありません。 「そんな事を言って。本当は盗聴器仕掛けたり、兄さんの私物漁ったり、日記読んだり、兄さん愛用のクッションに顔をうずめたり……」 ハアハアと息が荒くなるベラルーシがちょっと怖いです。 「とにかく。この家のどこに何があるかは、私が完璧に把握している。何か仕込んだり、持ち去ろうとしても無駄だから」
「……やっぱ、思いきって模様替えしたほうがいいんじゃね?」
妹の重すぎる愛が、かなり気の毒になったプロイセンでした。
「ベラちゃん〜。ここにいるの?」 突然書斎の扉が開き、入って来たのはウクライナです。ちょうどその時、ベラルーシはプロイセンの背後から彼の所持品検査をしていたところでした。 運悪くその光景は、「プロイセンの背中に抱きつくベラルーシ」という甘いシーンに見えました。ウクライナは頬を染め、消えそうな声で「お邪魔しました」と呟いて扉を閉めます。 「退くな! 俺をこの女から解放してくれっ」 助けてと言わないところが、プロイセン最後の矜持でした。 「どういうこと、なの?」 戻って来たウクライナを見て、ベラルーシが彼から離れました。姉には一目置いているようです。 プロイセンの話を聞いたウクライナは、顔に落胆の表情を浮かべます。 「な〜んだ、がっかり。プロイセン君が弟になるかもって、期待したのに〜」 「ンな腐った期待は、速攻ゴミ箱に捨てろ! 俺が焼却処分してやる!!」
いきり立つプロイセンを見て、しょんぼりと肩を落とすウクライナ。本気で「妹さんを俺にください状態」を期待していた様子です。
「弟も捨てがたいんだけど。私、プロイセン君なら『お兄ちゃん』って呼んでも良いんだけどな」
ふむ。と、ベラルーシも考え込む気配がします。 「なら、私にとっても兄? 兄なら身内だから、少しは考慮しよう」 嫌な予感がして後ずさりするプロイセンでしたが、いつの間にか姉妹に前後を挟まれていました。 「今からでも遅くない、ウチの人になりなさい〜」とふたりに迫られ、プロイセンは(どうやって逃げようか)と必死で知恵を絞るしかありませんでした。
掃除に行って、うっかり身辺整理されそうになったプロイセンの話でしたとさ。
BUT
END
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*おそうじネタ第二弾です。 第一弾では、アルが思いのほか冷やかでした。 「イヴァンなら手をたたいて喜んでくれるよ」と思って、突貫工事再びです。 が、なぜかメインはルーシ姉妹。 ウチのギルはエリザに片思いなので、たまにはモテモテにしてみようと思ったのに。 なんでこうなる(汗 いつものことながらわけが判りません。
とりあえず、この姉妹は書いていて楽しいので結果オーライという事で。
続き書きました。 その姉妹、危険につき
Write:2010/09/10
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